日本への憧れの芽生え

 

子供の頃の私

 

 

 

 

 

ベルギーの田舎

 

 

 

  

ニースの海岸

 私がまだ幼かった頃に、私のお母さんがどこで手に入れたのか、日本の絵本をプレゼントしてくれました。

 そして毎日のように、その絵本を読んでくれました。もちろんフランス語でしたが、貧しい家庭の子供だったと記憶していますけれども、心のやさしい幼児が、友だちや動物たちとの交流の中で、しだいに心豊かな少女へと育っていく話だったと覚えています。

 絵本の中では、ペーパードア(障子)やタタミマット(畳)など珍しい家の内部が紹介され、おそらく日本の貧しい田舎の風景も描かれており、私の育った周辺の光景とは全く違うものでした。

 それでも心やさしい少女のレリーフが、とても素敵でうるおいに満ちた描写でしたから、私の心はすっかり、まだ見ぬ日本のとりこになってしまいました。

 またお母さんは日本刺繍も器用にこなし、テーブルクロスやハンカチに、、とても美しい花や果物の絵を描いていました。美しいハンカチは使うのがもったいなく感じたことを、今でも鮮明に覚えています。

 年月は流れて、私が中学生の頃のことでした。お母さんと私は夏のバカンスをコートダジュールで過ごすために、ニースに暫く滞在しました。

 そんなある日のことです、お母さんとニースの浜辺に出かけて遊んでいたところ、お母さんが急に身体の不調を訴え、しゃがみこんでしまいました。

 そこには大勢の観光客もいましたが、海に入って泳いでいた日本人の大学生達が気付いて駆けつけてくれ、ミネラルウォーターを買って来てくれたり、背中をさすって元気付けてくれたり、途方に暮れていた私たち親子を手助けしてくれました。こうして私たちもことなきを得て、彼らとの交流が始まりました。

 こうして私の日本への憧れの芽は、子供の頃に母が導いてくれ、しだいに大きく膨らんで現在の私があるのです。

 

  

 

 

 

 

 

 

日本の田舎

 

 

 

 

 

 

  


私のお母さん