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巧緻性を育てよう

  • 園長コラム
  • Vol.52
 子どもたちと過ごすなかで気になることとして、「何事もすぐに諦めてしまう」姿があります。なぜ諦めてしまうのかと観察していると、ズバリ「手先が不器用」なんですね。例えば、靴を履こうとしても、指先がうまく動かない・力が入らない、紙を切ろうとしてもハサミをうまく扱えない、食事でもお箸を正しく持てない、服を着るのに時間がかかる。そんな子どもたちは、やろうとするけれど指先がうまく動かないから、イライラしてすぐに諦めてしまうようです。
 子どもの「巧緻性」は認知機能が著しく成長する就学前に鍛えることが、とても大切だと言われています。「手は第二の脳」とも言われ、手指を動かすことで脳に大きな影響を与え、知能を発達させるからです。巧緻性と学力は一見何も関係がないように思われますが、手指を使う学習や繰り返しが必要な学習に好き嫌いが現れます。そして、何より差が出るのが集中力。それでは、「巧緻性」はどのように鍛えればよいのでしょうか?
 園生活のなかで巧緻性の高さを見るとき、「切る」「折る」「貼る」「結ぶ」「塗る」「丸める」「包む」「ちぎる」「摘む」「ねじる」といった動作で判断します。生活のなかにこれらの動作をする機会はたくさん散らばっているはずですが、簡略化していたり、親が代わりにしていたりと、巧緻性を鍛えるチャンスを逃していることが多いようです。
 巧緻性を鍛えるために一番良い方法は、これらの動作がすべて盛り込まれている「工作遊び」です。特に道具を使うことは、巧緻性をとても高めます。危ないからという理由でなかなか使わせてもらえないハサミ。ハサミを使うだけでも「左右の手を同時に違う役割で使う」「体でバランスを取りながらハサミを動かす」「部分、全体の形を理解する」といった活動が含まれます。そして、硬いものが切れない!ビニールが切りにくい!という場合に、どんなふうにハサミを動かし、ハサミのどの部分で切ったら切りやすいのか、試行錯誤しながら自分の手指の感覚を高めていきます。さらに、工作をする過程では、ハサミ以外にも糊やセロテープ、クレパス、色鉛筆とさまざまな道具を使います。その道具を使う過程でそれぞれの特性を理解し、何よりも空想を楽しみながら物を作ることで、創造力が育まれます。今の子どもたちの遊びの主流はゲームですが、紙や廃材といった材料や、ハサミやセロテープ、両面テープなどのさまざまな素材を置いておき、いつでも工作を楽しめる環境づくりをすることで自然に巧緻性が高まります。私自身、幼いときはとにかくなんでも工作で作りました。買い物に行ってレジに憧れると、レジを作ったり、ダンボール箱でテレビを作ったり、本物のラジオを作ったりもしましたね。これは余談ですが、幼いときに指先の感覚を鍛えたお陰で、趣味である釣りの仕掛け作りにも苦労しません。そして、巧緻性を高めることで四肢の動きや体のリズム感、運動機能も高まります。もちろん、器用な手指を手に入れると、自然と集中力も向上します。
 今の子どもたちは生活が便利になるがゆえ、手先が不器用になる傾向ですが、幼児期は将来への準備期間です。読み書き計算を学ぶことも良いですが、まずは、生活のなかで手指を使う意識と環境づくりを心がけ、さまざまな事柄をたっぷりと吸収できる「脳」を育てましょう。器用な手指は、どんなことでも楽しめる将来を「手」に入れられることでしょう。

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