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食育~年長さんのパン作り~

  • 園長コラム
  • Vol.45
 最近よく聞くようになった「食育」という言葉は、その昔、明治時代に石塚左玄氏※が作った造語だそうです。時代が流れ、2005年に食育基本法が成立して以降、「食育」という言葉が身近になり始めたのではないでしょうか。
 そもそも「食育」とは、「食」を通して心身の健康と豊かな人間性を培うことを目的としています。そのため、特に幼い子どもには知育や徳育、体育よりも先に全ての根元を育てる「食育」を行う必要があると考えられています。
 本園で行っている「食育」は、畑で野菜を育てたり、クッキングをしたりと多彩です。これらの経験から何が育まれるのかというと、食べ物が生まれる過程を知ることで、食材への関心や感謝の気持ちが育まれ、食べたいものや好きな食べ物が増えるという効果があります。また、クッキングは子どもたちの五感を大いに刺激して脳を活性化させます。さらに、食を話題にしたコミュニケーションが生まれたり、伝統文化や地域の特産物に興味が広がったりするきっかけにもなります。実際に、本園の食育活動を通して野菜嫌いがなくなった子どもや、苦手だった野菜が大好きになった子どもも珍しくありません。好き嫌いを克服できた結果、生活態度や表情にまで変化が現れ、何事に対しても積極的になることが多く見受けられます。
 本園では色々なクッキングを実施するのですが、毎年年長さんには「パン作り」に挑戦してもらっています。子どもがパンを作るなんて想像できないかもしれませんが、これがなかなかのでき栄えなのです!なぜ、パン作りをするのかというと、私自身が初めてパンを作ったときに感じた、ふわふわのパン生地のなんとも言えない感触に感動したのがきっかけでした。外的刺激でこんなにも優しい気持ちにしてくれるものがあるのか!と感じ、ぜひ子どもたちにもパン生地にふれてほしいと思ったのです。
 今回、年長さんがチャレンジしたのは「ベーコンエピ」です。「エピ」はフランス語で「麦の穂」という意味。ハサミを使って大胆に切り込みを入れて麦の穂を表現していきます。一人3つベーコンエピを作ってもらったのですが、2つ目3つ目を作る頃には先生のお手伝いは全く不要。それぞれの子どもらしさが表れた個性豊かなベーコンエピが焼きあがりました。給食の際に焼き立てを1ついただき、残り2つはお土産に持ち帰ってもらいます。このお土産も私なりのこだわりで、持ち帰ったパンを囲んで家族でパン作りの話をして欲しいからなのです。作った本人が自慢げに話す姿を想像すると、なんだか私まで嬉しくなります。本園の子どもたちが野菜の栽培やクッキングを通して食に対する興味が確実に高くなっていることは言うまでもありません。  
 全ての根元となる規則正しい生活習慣や、正しく食を選ぶ力は、子どもたちのこれからの「知」「徳」「体」の育みを大いに支え伸ばしてくれること でしょう。
 食べる力は、生きる力。卒園後も、力強く歩んで行くことを願うばかりです。

※石塚 左玄(1851~1909):明治時代の日本の医師・薬剤師。 日本で初めて食育を提唱

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